20161010

October October



東京から熱海までは同じにおいだった

泣きわめく子どもがいても、泣く子どもの口の中に煎餅を投げ込む親がいても
お稲荷さんやサンドイッチを食べて、漬け物のキュウリが固い、真っ白の髪の毛は美しい、この間毛染めをしたの、こんな天気で運動会は可愛そうとお喋りをしながら漬け物のキュウリと柿の種を交換するおばあさんがいても
東京バナナを土産に夏目友人帳を読みながら抹茶のチョコレートを食べる優秀な(清潔感故)隣人がいても
同じにおいだった
においが変わるのは熱海から
にんげんの、洋服や箪笥や髪の毛や風呂場や今夜の営みや去年の里帰りや寝間着や布団やバドミントン部の試合や三十年前に泣いたことや子どもの未来を杞憂する親の、にんげんの、においがした

空気はひとの中へ外へ入っては出て、入っては出て、入っては出て、におうんだ、すごく